摂食障害は食行動を中心にいろいろな問題があらわれる病気のことです。一般に「摂食障害」というと主にやせ症と過食症の2つに大きく分かれます。当院では過食症(食べすぎてしまう)のみを専門として治療しております。
過食症は、食べたい欲求が抑えられず、食のコントロールができなくなり、頻繁に過食をしてしまう病気のことです。過食に加え、嘔吐など、体重を増やさないための行動が見られますが、どちらも人前では出ない症状のため、周りの人には気づかれないことも多いです。
自分自身、病気とは気づかないため、周りや医療機関に助けを求めないことが多いです。治療を受けないまま過食症を放置していると、体重増加などの身体症状がさらに進んだり、不安やうつ症状などの精神症状が強まったりすることもあります。早めの受診、治療が大切です。早めの受診、治療により過食症が重症化するのを予防できます。
過食症と、健康な人に時々見られる「やけ食い」などの行動とははっきり区別できない場合もあり、病気かどうかを判断したり、区別したりするのは難しい面もありますが、下記の過食症の症状にあてはまる部分が多い場合は、ぜひ当院にご相談ください。
他とはっきり区別される時間帯に(例えば、2時間だけの間に)、ほとんどの人が同様の状況で同様の時間内に食べる量よりも明らかに多い食物を食べる。
普通よりもずっと速く食べる。
苦しいくらい満腹になるまで食べる。
自分がどんなに多く食べているか恥ずかしく感じるため1人で食べる。
後になって、自己嫌悪、抑うつ気分的、または強い罪悪感を感じる。
過食は、大量の食物を、詰め込むように一気に食べるのが特徴です。むちゃ食いとも言われます。周りから意志の力で止められるはずだと思われることが多いですが、自分自身では止められず、コントロールできない感覚が強い場合が多いです。米国精神医学会の診断基準では、週に1回でも過食があれば治療が必要とされております。
また、吐く、下剤を使うなど、体重を増やさないための行動が見られます。過食時間以外は絶食という場合もあります。精神的には、体重次第で自己評価が変わったり、気分の浮き沈みがあったりします。少しでも体重が増えると、生きている価値が無いと考えたりします。
また、食事において100%完璧を求める傾向も強く、少しでも体重が増えてしまうと失敗だと思う傾向があります。過食してしまった後は体重増加や疲労感、周りの目を気にすることから学校や職場に行けなくなったりします。また過食するため、物理的に食事代に多額の費用がかかったりするなど、生活面にも影響が出ることも多いです。
また無気力になり、問題行動としては自殺行為、自殺企図、薬物乱用、万引き行為などが見られることがあります。
また無気力になり、問題行動としては自殺行為、自殺企図、薬物乱用、
万引き行為などが見られることがあります。
また精神症状では、強い痩せたい願望があり、肥満に対する恐怖や自分の体形に対する認識に歪みがあり、病気への自覚はあります。
また精神症状では、強い痩せたい願望があり、肥満に対する恐怖や
自分の体形に対する認識に歪みがあり、病気への自覚はあります。
体重や体形に対する歪んだ認識や価値観を修正していきます。
薬物や点滴、輸液による治療を行います。
行動を制限し、少しずつ目標を設定して、それをクリアする達成感をバネに食行動を改善していきます。
支持的精神療法(患者さんの話を共感して聞き、支持したり励ましたりします)
治療には、過食嘔吐を減らし、うつや自信の無さを改善することが重要です。過食することをやめたいと希望されることが多いですが、過食以外の食事がほとんど絶食の状態であると、過食を止めることは難しいです。始めは「過食することを0にする」ことよりも、食事の規則性やコントロール感を取り戻すことを目指していきましょう。
そのためには、毎日の生活パターンを把握し、生活のリズムを決めることが大切です。その上で、薬物療法、心理療法(認知行動療法など)を行います。薬は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤と言われる抗うつ剤)が過食嘔吐を減らす効果があると言われています。
ただし、長期の効果については不明で、薬物だけでの完治は困難だと考えられています。あくまで食事管理指導、薬、意識変容など全てを総合的にサポートする治療体制が必要です。
認知行動療法とは、症状やその背景の気持ちを本人が記録し、それを検討しながら、症状コントロールについて考えていくものです。あくまで治療としては、外来に通院してもらう治療が基本となっております。ただし、生活リズムを改善できない場合や、うつが強い場合、薬物調整をしたり病院で治療をする方がよい場合は、患者さんの強いご希望があった時のみ当院の系列病院に入院して治療を行うことも可能です。※医師の診断が必要になります。